【コンセプトと内容】

路面電車が行き来した懐かしい風景。鉄のにおいを持つこの記憶はいったい誰のものだろう。記憶は伝達のたびにそのカタチを変え、そしてなおも伝達を繰り返す。私たちの心にある確かなそれは、実のところ不確かな残像にすぎない。ならばその不確かさを生み出す伝達そのものに目を向けて、その手順の解明こそを試みよう……(「こころのたねとして」フライヤーより)

このプロジェクトは「記憶」について、そのひとつの捉え方を芸術表現の分野から模索・提案していこうというものです。

記憶とは一般的に「過去に体験したことや覚えたことを忘れずに心にとめておくこと、もしくはその内容」を指します。また心理学においては「生物体に過去の影響が残ること。また過去の経験を保持し、これを再生・再認する機能の総称」とされているそうです。しかしながらこうした解釈には、実際にわれわれが記憶に対して感じうる実感が抜け落ちており、概念の域を脱することが出来ません。そこで多かれ少なかれその「実感」を結果として提示する芸術表現の分野から、もしくはそこで生み出される方法論によって、記憶が私たちにとってどのようなものであるかを捉え直そうと考えています。

今回のプロジェクトにおけるひとつの着地点は<ドラマリーディング>という形式の公演です。出演者はそれぞれ異なる分野で活躍する7人の詩人、ラッパー、研究者……。彼らはこの街で生きてきた7人の人物に対してそれぞれ記憶の聞き取りを行ない、それぞれの方法論で文章化していきます。そしてそれは結果的に舞台の上で朗読され、ある種の時間芸術として皆さんの前に立ち現れていきます。しかしながらそこで示されるのは表現の巧みさや力強さ、それによって示される世界観ではなく、多様な変容を遂げながら伝達されていく記憶のありようそのものです。つまりこの時出演者たちは、それぞれ異なる個性を持った表現者であると同時に、それぞれ異なる特性を持った記憶の媒介として機能するのです。この街の生きてきたという7つの記憶は、彼らによってさまざまなかたちで記録され、編集され、ドラマリーディングという方法によって再び伝達されていきます。

また、伝達における記憶変容の実態を明確にするため、出演者には彼ら自身の表現における手順をアルゴリズム化し、さらにドラマリーディングにいたる一連のプロセスにおいてそれを順守することが課せられています。これもドラマリーディングとあわせて提示される予定です。

プロジェクトディレクター
岩淵拓郎(美術家)

 


 

【イベント概要】

名 称 こころのたねとして
<伝達科学>記憶の手順としてのドラマリーディング、もしくは路面電車跡
日 時 2007年7月16日(祝)
開場 15:30 / 開演 16:00
会 場 新世界ココルーム
大阪市浪速区恵美須東3-4-36 フェスティバルゲート4F
TEL.06-6636-1612
料 金 2,000円
内 容

1.ドラマリーディングライブ
出演=SHINGO☆西成(ラッパー)、樋口美友喜(脚本家・俳優)、松井美耶子、Hex (アクティヴィスト)、佐相憲一 (詩人)、原口剛(地図学者)、上田假奈代(詩人)
2.トークセッション「記憶と境界知」
出演=瀬名秀明(小説家・東北大学特員教授)、橋本敬(北陸先端大複雑系准教授・進化を味わう複雑系研究者)

スタッフ プロジェクトディレクター:岩淵拓郎(美術家)
音響:かつふじたまこ
主 催 こたね事業実行委員会/大阪市/財団法人大阪城ホール
企画・制作協力 特定非営利活動法人こえとことばとこころの部屋
協 力 阿倍野区コミュニティ協会
助 成 財団法人地域創造
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